「……ありゃりゃ」
体重計の目盛りとにらめっこしていたヘリオドールが、あちゃーと言わんばかりに顔を覆った。
「どうしたの?」
「うーーーん、太ったかもしれないなー」
「あらまぁ」
体重のこととなると、パイロープも無関心ではいられない。
覗きこむように目盛りを見つめ、くりっとヘリオドールの顔を見上げた。
「そんなに太ってるようには見えないわよ?」
「いーや、ベスト体重からすると、3kgは多いんだよなぁ。
……参った。やっぱり、メシが美味いから」
よよよ、と嘆いてみせるヘリオドールを、その『美味いメシ』を作っている当人が軽く睨む。
「自分の自制心のなさを棚に上げるつもり?」
「だって、自制心なんて利くわけないじゃーないか。あんっなに美味いメシを前にして!」
「…嬉しい言葉だけど、拳作ってまで主張することなの?」
「俺にとってはね」
ニッと笑って見せた青年に、パイロープがクスクス笑いながら「それはどうも」と膝を折って小洒落たお辞儀をしてみせた。
「それで、どうするの? ダイエットする?」
「そうだなぁ…、やっぱりソレしかないかぁ」
「じゃあ、ルース流ダイエット法はどうかしら。やってみる気ない?」
さらりと爆弾発言であった。
「………」
ゆっくり三つ数えて後、油切れを起こした蝶番(ちょうつがい)がきしむ音が聞こえてきそうな仕草で首を回し ―― ヘリオドールは泣きそうな顔で笑う。
「いや、あの…さらっとおっしゃいますけどパイロープサン?
安全第一で行きませンカ……?」
「開かずの扉の向こうに、何かがあるらしいわよーーー?」
「そんな楽しそうにもぅ…。
勘弁してください、ホントに…」
ぐてっと脱力して壁に手をつくヘリオドールの背中を、ポンポンと叩いてコロコロ笑うパイロープ。
「そんなに嫌がることないじゃない」
「じゃあ、パイロープがやってみれば……?!」
「絶対嫌」
ニッコリと即答する少女の笑顔は、青年が長年敗北し続けてきたソレである。
「……ま、ひとまずふつーーにダイエットするから。うん」
「そう? じゃ、それで失敗したらルースに口きいてあげるわね」
「な、なんでそんな楽しそーにーーーー。
……ダイエット、頑張るぞっと」
いつもの、のほほんとした響きではあるが、目が真剣である。
ヘリオドールにしてみれば、かなり切実な誓いのようであった。
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